雇用保険に加入していて退職すると受給可能な手当はいくつかありますが、最もポピュラーなのは失業手当。
次いでよく知られているのは「再就職手当」だと思います。
では、「就業手当」はご存知でしょうか。
再就職手当と就業手当、どちらも職に就くともらえる手当なのですが、もらえる要件が異なります。
よく似ているのは名前だけではなく、制度の成り立ちもほぼ同じです。
では何が違うのでしょうか。
今回は、就業手当について見ていきます。
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就業手当の支給要件
就業手当の支給要件は以下のとおりです。
基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3以上あり、なおかつ45日以上ある状態で職に就く(就業、就労)と基本手当の3割が支給されます。
ちなみに再就職手当はこのような内容でした。
- 失業手当の支給残日数を所定給付日数の1/3以上残して就職した場合…支給残日数の50%を再就職手当として支給
- 失業手当の支給残日数を所定給付日数に2/3以上に残して就職した場合…支給残日数の60%を再就職手当として支給
要件の設定方法もよく似ていますね。
ちなみに、常用就職支度手当というものもありました。
この、再就職手当、就業手当、常用就職支度手当は総称して「就業促進手当」とも呼ばれています。
就業手当と再就職手当の違い
これらの「就業促進手当」と呼ばれる制度は、早期就職を促すための制度として作られた手当です。
再就職手当は正規雇用、アルバイトなどのパートタイム職についた場合は就業手当と住み分けされています。
違う部分は就業手当が基本手当の3割に対し、再就職手当は支給残日数の50%もしくは60%と言う部分です。
この文章だけだと違いがわかりにくいのですが、就業手当は給付日数の1/3かつ45日以上を残した状態でアルバイトを始めると、アルバイトを行った期間アルバイト代と基本手当の30%を貰えるというものです。
対して、再就職手当は給付日数の1/3(2/3)を残して就職すると残りの支給日数の50%(60%)の基本手当をもらえるというもの。
就業手当は本当にオトク?
上の説明ではアルバイトしつつ手当がもらえる一粒で二度おいしい制度のようにも思える就業手当ですが、条件によっては不利になることも。
どういうことかというと、就業手当には上限額が決められているということです。
そして、就業手当を受け取った場合、基本手当を全部受給したとみなされるということです。
就業手当の上限額
就業手当はアルバイトをしつつ基本手当日額の3割がももらえる反面、手当の上限額は1,765円と非常に低く設定されています。
つまり、基本手当日額が5,900円以上の場合は上限に引っかかってしまいます。
また、就業手当をもらった場合、手当をもらっているので働いた日数分の給付は先送りされません。
失業認定日にアルバイトの申告をしただけの場合は、アルバイトをした日の失業手当はもらえませんが、就労をした日数分の給付は先送りされます。
参考:給付制限中にアルバイトしたいけど大丈夫?
失業前の給料が高かった場合、就業手当をもらってアルバイトをすると給付日数をいたずらに消費してしまうばかりです。
時給がそれほど良くなくて、勤務時間も短いアルバイトならなおさら損です。
そうであれば、アルバイトを日は基本手当を不支給にして給付を先送りしたほうがトクではないでしょうか。
就業手当の手続きは原則申請しないといけない
このように多くの場合、就業手当は受給要件をクリアしていても受給申請をしないほうがいいのですが、ハローワークとしては「原則、対象者は全員申請」とのスタンスをとっています。
ただしこれは原則論で、それぞれのハローワークによって見解はまちまちのようです。
したがって、「一日限りの単発のアルバイトであっても申請しなければならない」とするハローワークがある一方、「10日程度で終わるアルバイトなら申請しなくてもOK。だたし、それ以上行う場合は申請が必要」とするところも。
厳しい対応のハローワークだった場合は?
所轄のハローワークが就業手当の見解が甘ければありがたいのですが、厳しい場合も少なくありません。
厳格なハローワークにあたった場合、アルバイトをすればするほど受け取れる基本手当の額が減ってしまいます。
そのようなハローワークにあたった場合は就業手当の支給要件を思い出しましょう。
就業手当の支給要件は以下のとおりでした。
基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3以上あり、なおかつ45日以上ある状態で職に就く(就業、就労)と基本手当の3割を支給。
所定給付日数が1/3以下もしくは45日未満になってからアルバイトを始めると就業手当の支給要件から外れるので、アルバイトをした日数分の基本手当は先送りされるようになるので、満額支給されるようになります。
就業手当をもらってトクするケース
ここまで見てきましたが、就業手当はあまりもらっても得をしない制度のように思えるかもしれません。
最後に、就業手当をもらって得をするケースを紹介します。
失業の手続きをして待機期間終了後すぐに再就職をしたものの、正規雇用ではなく雇用期間が1年未満という期間の定めのある場合です。
このような場合、再就職手当の支給要件を満たすことが出来ません。
このようなケースでは、失業認定日を一回もむかえていないので失業手当はもらえませんし、さらに再就職手当ももらえません。
しかし、就業手当の手続きを行うと、たかだか上限1765円とはいえ、給付日数分の手当をもらうことができるので少しは恩恵を受けられるはずです。
給付日数が90日で基本手当日額が6,000であれば就業手当は上限いっぱいの1765円です。
この場合、就業手当はトータルで158,850円分もらえます。
こうやって見ると場合によっては就業手当も馬鹿には出来ませんね。