自己都合での退職なのか会社都合退職なのか判断しにくいのが、自発的に退職するように会社が仕向ける場合です。退職を強要されたり分かりやすい嫌がらせなら判断しやすいのですが、直接的ではなく時間をかけて徐々に追い込まれると、判断力も落ちてしまい逃げ出すように任意(自己都合)退職してしまうことも。
今回はどのような場合に「理不尽な配置転換(転勤・転属)などで会社都合で退職した」と認められるのかを見ていきます。
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任意(自己都合)退職でも条件がそろえば会社都合に
たとえば、「勤務先から直接、もしくは間接的に退職することをすすめられた」場合は、会社都合にあたることは明白です。
厚生労働省によると「形式は任意退職であっても、退職を強要されたり、希望退職の募集に応募する場合などのように、被保険者が離職せざるを得ない状況に置かれた場合は、これに該当する取扱いとする」とされています。
※ここで出てきた「希望退職」は、離職前1年以内に導入され、募集期間が3カ月以内のものをいいます。(通年設けられている”早期退職者制度”は対象外です)
結果的に辞めざるをえない処遇を受けて退職した場合は?
「勤務先から直接、もしくは間接的に退職することをすすめられたり強要された訳ではなく、希望退職にも応じなかったが、結果的に辞めざるを得ないような処遇をされた」場合はどうなるのでしょうか。
例えば、入社からずっと営業、ずっと経理をしていたのに、いきなり全く経験したとのないプログラミングを行う部署や設計部門に配置転換された場合などが該当します。
勤務先の主張は、あくまで社員教育、ジョブローテーションの一環として行ったと言うかもしれませんが、配置転換された当事者はリストラや何か別の意図を持って配置転換したのではないかと考えるのではないでしょうか。
厚生労働省が示す基準によると、
事業主が労働者の職種転換などに際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていいないため離職した者
は、会社都合による退職として扱われます。
全く畑違いの部門への配置転換をする場合、事前にヒアリングを行い研修・トレーニングを行う必要があります。
「職業生活の継続のために必要は配慮」とは、当人の意向や希望、研修やトレーニングを(十分に)行ったかのかどうか、「離職を余儀なくされた」とは、研修やトレーニングが十分に行われずに配置転換された部署で適応できず、やむなく離職を選択した場合のことを言います。
通常のジョブローテーションと理不尽な配置転換の判断基準
リストラ目的での配置転換かどうか分かりづらいケースも多数ありますが、厚生労働省では以下の3つの基準を掲げています。
- 10年以上一つの職種についているにも関わらず、十分な教育訓練もないまま配置転換されられた
- 特定の職種に就くことで採用されたのに、別の職種に配置転換させられ残業手当を除いた賃金が下がった
- 配置転換命令が権利濫用となるケース
システム部門の技術者として採用されたにも関わらず、営業や資料編纂部門に配置転換された…このケースの場合、明確に「退職を余儀なくされた」と判断されるでしょう。
3.は介護が必要な家族を抱える、労働組合活動を精力的に行っている労働者が遠隔地に転勤を命ぜられた…このようなケースも「退職を余儀なくされた」
と判断されるでしょう。
その他会社都合となるケース
「言葉による暴力などによって退職を強要される」ケースなど-パワハラ(パワーハラスメント)やモラハラ(モラルハラスメント)-も該当します。
これは、厚生労働省のガイドラインにも以下のように規定されています。
上司や同僚などから故意の排斥(はいせき)、または著しい冷遇もしくは嫌がらせを受けることによって離職した者
職場内のイジメや研修室(通称:追い出し部屋)に閉じ込めて毎日反省文を書かせたり、上司や同僚からの言葉による暴力を受け続けた場合は明確に「退職を余儀なくされた」と判断されるケースに該当します。