再就職手当は、失業手当の支給日数を一定以上残さなければもらえませんでした。
若い人なら比較的短期で決まる再就職。新たな環境に適応しやすく、体力的にも融通がきくので事業所も同じような条件なら若い人を取りたがります。
そうなると、中高年は転職活動が長期化しやすくなってしまい、再就職手当をもらうことがなかなか難しいのが現状です。
再就職が決まってからおこなう準備は若者でも中高年でも変わりません。
そこでこのハンデを埋める意味で設けられたのが「常用就職支度手当」です。
「常用就職支度手当」は再就職時の年齢が45歳以上の人や障がいを持つ方など、失業してから再就職までの期間が長期化しがちな人を対象とした手当金の制度です。
今回は、「常用就職支度手当」について見ていきます。
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「常用就職支度手当」制度の特徴
常用就職支度手当は、再就職手当のように失業手当の基本手当の支給残日数が何日以上なければいけないなどという制約はありません。
また常用就職支度手当は、失業手当の支給期間として決められている1年を経過してから就職しても支給されます。
そして最大の利点は、基本手当の支給残日数に特例が設定されていることでしょうか。
失業手当の基本手当の支給残日数を1日でも残して就職すると、支給残日数45日とみなして手当を計算してくれます。
常用就職支度手当は再就職手当と同様に支給残日数の40%分の額をもらうことができます。
これだけだとわかりにくいと思うので、具体例をあげます。
例)基本手当日額が5,000円で基本手当の支給残日数が残り1日の場合
45日×40%=18日
18日×5,000円=9万円
基本手当の支給残日数を1日残すだけで、9万円ももらえることができます。
9万円はかなりありがたい金額ですよね。
再就職手当と違い、期限ギリギリに就職したほうがお得
再就職手当の場合はなるべく早くに就職を決定したほうがもらえる手当額が大きかったのですが、常用就職支度手当は基本手当を貰い終えるギリギリに就職したほうが総支給額が増える制度になっています。
だからといって、のんびり構えては条件の良い職場を逃してしまうことにもなりかねません。
内定をもらったタイミングで内定先の事業所に就職日を相談したほうがよいでしょう。
再就職手当との制度の違い
このようにかなりお得な常用就職支度手当。
常用就職支度手当の支給要件は再就職手当とほぼ同じなのですが、違う部分もあるので説明しておきます。
再就職手当よりも少し支給要件のハードルが高くなっています。
給付制限期間経過後に就職しなければもらえません
再就職手当の支給要件では、「待機期間の経過後に就職した」ことが要件になっていました。
常用就職支度手当の場合は、「待機期間の経過後に就職し」、さらに「給付制限の期間が経過した後に就職したもの」となっています。
自己都合退職の場合、待機期間の7日と3ヶ月の給付制限明けに就職した場合のみ支給対象になります。
したがって、給付制限期間に就職した場合は、支給対象とはなりません。
この場合は、再就職手当の支給になります。
早期に就職が決まれば、より貰える金額の多い再就職手当をもらえる可能性が高いので、当たり前といえば当たり前なのですが。
就職はハローワークもしくは職業紹介機関の紹介でなければならない
再就職手当の場合、給付制限を受けている人は、「1ヶ月以内の就職はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介」でなければなりませんでした。
それに対し、常用就職支度手当の場合は、「すべてハローワークまたは職業紹介事業者の紹介でなかればならない」となっています。
常用就職支度手当の支給要件
常用就職支度手当の支給要件は下記のすべてに該当しなければなりません。
- 公共職業安定所または職業紹介事業者の紹介により1年以上引き続いて雇用されていることが確実であると認められている職業についたこと
- 離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと
- 「待機」が経過した後において職業についたこと
- 給付制限期間が経過した後において職業についたこと
- 常用就職支度手当を支給することがその職業の安定に資すると認められること
- 適用事業の事業主に雇用され、被保険者資格を取得したものであること
- 就職困難者であること
- 就職前3年以内に再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと
45歳以上もしくは障がい者などの要件は「7.就職困難者であること」に含まれます。
常用就職支度手当の支給額の計算方法
常用就職支度手当の計算方法は以下のとおりです。
だたし、基本手当日額の上限は5,885円(60歳以上65歳未満は4,770円)です。
- 支給残存日数が90日以上の場合
90日×40%×基本手当日額 - 支給残に数が45日~90日の場合
支給残日数×40%×基本手当日額 - 支給残日数が45日未満の場合
45日×40%×基本手当日額
常用就職支度手当の手続き
常用就職支度手当の手続きは再就職手当とほぼ同じ手続きをふみます。
常用就職支度手当の手続きは、再就職した日の翌日から1カ月以内に、ハローワークで「常用就職支度手当申請書」をもらい、受給資格者証と印鑑を用意して申請します。
最後の失業認定日に手続きをする場合
最後の失業認定日に再就職手当の手続きを済ませる場合には、内定をもらったらすみやかに書類の手配することが必要です。
内定をもらったらハローワークに出向き「常用就職支度手当申請書」をもらいます。
「再就職手当支給申請書」と「受給資格者のしおり」についている「採用証明書」に就職先の事業所に確かに採用したと記入捺印してもらいます。
記名捺印してもらった「常用就職支度手当申請書」と「採用証明書」、「受給資格者証」、「失業認定申告書」と印鑑をハローワークに持参し手続きをします。
就職後に再就職手当の手続きをする場合
最後の失業認定日にすべて手続きできると良いですが、就職先の都合や自分自身の就職準備などで一度に済ませる難しいことが難しい場合もあります。
その場合は、就職日以降1ヶ月以内に持参または郵送で手続きをすることも可能です。
最後の失業認定日に「常用就職支度手当申請書」をハローワークからもらいます。
新しい職場に着任後、事業所に「常用就職支度手当申請書」と「採用証明書」に記入捺印してもらいます。
記名捺印してもらった「常用就職支度手当申請書」と「採用証明書」を所轄のハローワークに持参または郵送します。
郵送する場合は、万全を期すため配達状況を確認可能な書留や特定記録郵便などで送りましょう。
持参と郵送、どちらがいいかと言えば、その場で訂正できる持参がオススメですが、ハローワークの開いている時間や勤務状況を考慮すると郵送が現実的かも知れません。
ただし郵送の場合、書類に不備が見つかり訂正して再度申請すると、「再就職から1ヶ月以内」という期限に間に合わなくなってしまうこともあるので注意が必要です。