「退職を余儀なくされた」と認められるにはいくつもの条件がありますが、「常識では考えられないくらいの長時間労働(残業)」をした場合も、退職を余儀なくされた理由として認められます。
今回は、長時間労働で会社都合になる場合の基準について解説します。
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「解雇以外で会社都合退職となる場合とは」で掲載した「会社都合(特定受給資格者)と判定される主な退職理由」の5.を見てみましょう
離職の直前6か月間のうちに3月連続して45時間、1月で100時間又は2~6月平均で月80時間を超える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
条件を整理すると、
- 退職前の半年のうちに3カ月連続して月に45時間以上の残業をした場合
- 退職前の半年のうちに1カ月に100時間以上の残業をした場合
- 退職前の半年のうちの2カ月間から6カ月間に月平均80時間以上の残業をした場合
のいずれかの場合に、行政機関から事業主に過労による危険や健康障害に関する指摘があったのに何も対策をせず、離職した場合に「退職を余儀なくされた」と認められます。
法定労働時間について知っておく「三六協定」って?
会社が雇っている労働者に法定労働時間に定められた週40時間以上働かせる場合、「三六協定」を会社と労働者の代表(多くの場合は労働組合)と呼ばれる協定を結ばなくてはなりません。
この「三六協定」は通称で、正しくは「労働基準法36条に関する協定」といいます。
この協定を締結したうえで、労働基準監督署に届け出なければなりません。
「三六協定」では上限の目安が定められています
会社と労働者側で締結された三六協定によって、年間または月間、もしくは週間の時間外労働の上限を決めますが、この時間外労働時間の上限は労働基準法によって目安が示されています。
この労働基準法によって示された目安を超える時間外労働は基本的には禁止されています(例外となるのは、「自動車の運転業務(タクシーやトラック運転)」や「工作物の建設業」などの一部の職種と、それ以外の業務の場合は特別な事情がある、繁忙期の一定期間などの場合のみ)。
時間外労働時間の限度
労働時間 | 限度時間 |
---|---|
1週間 | 15時間 |
2週間 | 27時間 |
4週間 | 43時間 |
1カ月 | 45時間 |
2カ月 | 81時間 |
3カ月 | 120時間 |
1年 | 360時間 |
上の表の時間を超え残業して耐えることができず退職した場合は「労働基準法に基づき定める基準に規定する時間を超える時間外労働が行われたため離職した者」に該当し会社都合での離職と認められます。
※ただし、離職前3カ月以上にわたって続いたことが条件です。また、有給休暇や体調不良などやむをえない理由により時間外労働が行われていない月は除外します。
労働者の安全や健康を守らなかった場合
上記の時間外労働のほか、労働者の安全や健康を守るために必要な措置(例:屋外勤務で熱中症対策として必要な休憩を取る、定期的な健康診断の実施など)を講じておらず、安全や健康を守るための措置について行政指導されたり改善命令が出されたにも関わらず、改善されなかったために退職してしまった場合も「退職を余儀なくされた」と認められます。
「安全や健康を守るための措置」したかどうかはなかなか判定が難しいところです。
行政機関から改善するよう指摘があったにも関わらず改善がされなかったという「安全や健康を守るための措置」を勤務先が怠ったという事実を積み重ね、資料などをそろえる必要があります。