退職した後ハローワークに行き雇用保険の手続きをおこないますが、その際に「自己都合」や「会社都合」という退職理由の判断を行い給付の期間などを決定します。今回は何となく使われている「自己都合」「会社都合」という、退職理由について見ていきたいとおもいます。
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「自己都合」「会社都合」という文言、実は雇用保険法では使われていません
見出しで結論を書いてしまいましたが、実は雇用保険法には「自己都合」や「会社都合」という言葉を使って退職者を分けてはいません。
実際には、実務上の判断で使われているだけなのです。
自己都合で退職した人
雇用保険法ではこのように書かれています。
「自己都合」で退職した人は、「自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された者」、もしくは「正当な理由がなく自己の都合によって退職した者」と書かれています。
簡単に説明すると、「自己の責めに~」と書かれている方は、いわゆる懲戒解雇です。労働者が自らの過失や故意によって会社に損害を与えたために解雇された人のことを指します。「正当な理由が~」と書かれている方は、自分の意思で退職を決めた人のことを指します。
会社都合で退職した人
一方、「会社都合」で退職した人は、「『倒産』等により離職した者」と「『解雇』等により離職した者(ただし、自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)、その他の厚生労働省令で定める理由により離職した者」に分かれます。
「『倒産』等に~」の方は、文字通り会社の倒産や勤務していた事業所が閉鎖され行き場を失った人を指します。「『解雇』等に~」の方は、落ち度や解雇される理由もないのに一方的に解雇された人や、労働条件が悪く退社せざるを得なかった人を指します。
会社都合での退職については、平成13年に改正された雇用保険法により、失業保険の所定給付日数が優遇される「特定受給資格者」と規定されるようになりました。
特定受給資格者とは
「会社都合」で退職を余儀なくされた人のことをいい、以下のいずれかに該当すると所定給付日数が最大で180日優遇されます。
- 「倒産」等により離職した者
- 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各種倒産手続きの申し立て又は手形取引の停止等)に伴い退職したもの
- 事業所において大量雇用変動の場合(1カ月に30人以上の離職を予定)の届け出がされたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超えるものが退職したため離職した者
- 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む)に伴い離職した者
- 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者
- 「解雇」等により離職した者(ただし、自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)、その他厚生労働省令で定める理由により離職した者
会社都合で倒産等により離職した場合のの具体例
「倒産」はもちろんですが、自分が勤務していた店舗や工場、営業所などが移転することになり、自宅から移転先への通勤が困難になった場合などもこのケースに含まれます。しかし、この「自宅から通えない距離」かどうかの判断はどのようにするのでしょうか。
厚生労働省では、通勤困難を認める基準として「往復で4時間以上かかる場合」としています。
このようなケースが認められるのは、(1)事業所移転の通知を受けてから1年以内で、(2)実際に移転してから3カ月以内での離職の場合のみ「特定受給者」として認められません。
また、事業所の移転による転勤する場合は、就業規則などで全国転勤することが明記されていると特定受給資格者とは認められません。
だだし、この場合でも「通勤に往復4時間以上」かかる場合は給付制限は解除されます。